AEDと心肺蘇生法ガイドラインについて
2010年03月25日
皆様、救命講習で習っている心肺蘇生法が5年に1回変わっているのはご存じでしょうか。
これにより、AEDの操作方法も変わります。
1992年に設立された国際蘇生連絡協議会(ILCOR)という組織により、心肺蘇生法は国際標準化しました。
非常に画期的なことでした。
このガイドラインは5年に1度変更されるもので、5年後の2005年にガイドライン2005(G2005)が発表されました。
そして、本年は2010年になりました。新しいガイドライン2010(G2010)が発表されます。
G2005の時には、国際蘇生連絡協議会(ILCOR)が作成する心肺蘇生法のガイドライン作成に日本は深くまで関われていなかったため、ガイドライン発表後、日本国内でのガイドライン発表に時間がかかり、ガイドライン発表が約1年遅れ対応が2006年になりました。
しかし、日本の救急医療に関わる組織も頑張っています。
日本蘇生協議会(JRC)は、ILCORに加盟しガイドライン作成段階から関わり、ガイドラインを作成の最新情報が入るようになっています。そのため、G2010は発表後すみやかに日本国内でも発表されると推察されます。
ここで、いくつか新しいガイドラインに対して考えておきたい。
■ガイドライン作成に関わる歴史
大きく2つ、
①胸骨圧迫と人工呼吸の比率(胸骨圧迫数:人工呼吸数)
G2000の前 5:1
G2000は、15:2
G2005は、30:2
と胸骨圧迫の比率が増えてきています。
②AEDショック回数
G2000は、AEDによる電気ショック連続3回後、2分間胸骨圧迫と人工呼吸の繰り返し
G2005は、AEDによる電気ショック1回後、2分間胸骨圧迫と人工呼吸の繰り返し
傾向として胸骨圧迫が増え、AEDによるショック回数が減っています。
AEDによるショック回数は変わらないと思いますが、胸骨圧迫はG2010ではまた回数が増えると思われます。
人工呼吸に関してはコメントは差し控えたいと思います。
■一般市民の備えであるAEDの操作が3パターンになる。
市場にでまわっているAEDは販売当時のガイドラインに対応した設定で販売されています。
AEDが2004年7月に法改正され、市場で販売されたAEDのガイドラインは、G2010を含めると、今後G2000とG2005とG2010と3種類となることになります。
G2000対応のAEDは、電源を入れると解析を3回連続行い、胸骨圧迫と人工呼吸にうつります。
G2005対応のAEDは、電源を入れると解析を1回行い、胸骨圧迫と人工呼吸にうつります。
G2010対応のAEDは、どうなるでしょう?いくつか情報がありますが正式な発表を待ちましょう。
ガイドライン変更にともない、①AEDの問題と②AEDを操作する時の問題を考えておきましょう。
①AEDの問題
現在販売されているAEDのほとんどは、ガイドラインにともなう設定を変更可能です。
設定の変更範囲の問題はありますが、変更できるようにつくられています。
しかし、2004年7月の法改正後AEDが普及し始めた2005年から2006年頃、オレンジ色のAEDで新しいガイドラインに変更もできないAEDが販売されていました。また、当時小児にも対応できないAEDがありました。
金額優先になる多くの役所の入札などで落札され導入されていました。
そのため、AEDの設定を変更しようとしても対応できないAEDがあるということ
また、AEDの設定は変更可能だが、変更するかしないかは購入した人の責任で行うということ
これにより、国内のAEDは見かけは同じでも操作が違うものが多くなると思われます。
②AEDを操作する時の問題
では、AEDの操作が複数パターンのものが日本国内にあるから、大問題になるのか…
私は、そうは思いません。
もちろん、最新のガイドラインに則したほうが、蘇生率は多少上がると思いますが、倍半分ほどの大きな差はないと感じます。
大事なことは、AEDの音声ガイドを良く聞き行動する
また、救命の連鎖とも言いますが、多くの人の助けをかり、助け合って救助することが大事です。
一般市民と救急隊と病院と連鎖はつながっていきます。
しかし、救命講習で習ったことと違うパターンでAEDが動くと、救命時の興奮状態の時に戸惑うこともあると思います。
これは、今後の救命講習時やさまざまなメディアなど情報発信の機会に、AEDの種類があることと音声ガイドにしたがうことを発信しないといけないと思います。
■心肺蘇生法セルフトレーニングのおすすめ製品
国際ガイドラインを作成する、国際蘇生連絡協議会(ILCOR)に加盟する日本蘇生協議会(JRC)が推奨してる製品
世界シェアNO1で、世界の救急救命市場のリーディングカンパニーのレールダル社が全世界で発売している製品
それは、「ミニアンという製品です。
これを救命コムで販売しており、人気の販売商品となっています。
これは、画期的な製品で国際標準の心肺蘇生法をセルフトレーニングできます。テレビとDVDプレイヤーがあればどこでもトレーニング可能。
学校やご家庭、まとまった時間をとりにくい企業でのトレーニングなど
一般市民の救命講習の機会を広げる製品です。
AEDにも問題はありますがAEDが重要なのではなく、助ける一人一人の行動や意識がもっとも重要です。
AEDに振り回されず、一般市民の救命への参加が増えることを願います。
救命コムも、AEDなど販売・レンタルすることにのみにとらわれず、一般市民の救命のあるべき姿を探求していきます。
AED 328件不具合の疑い
2010年02月22日
このニュースに関して、AEDの知らないことも多いと思いますので、コメントさせていただきたいと思います。
ニュースは下記の内容です。
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総務省と厚生労働省が共同事務局を担う「全国メディカルコントロール協議会連絡会」(会長=小林國男・帝京平成大教授)が全国の消防機関を対象に実施した調査で、AED(自動体外式除細動器)の不具合が疑われた事例の報告が計328件あった。
調査は、昨年12月8日から今年1月15日まで、各都道府県を通じて全国の803の消防機関を対象に実施。AEDの不具合が疑われた事例について報告するよう求めた。
調査結果によると、AEDの不具合が疑われた事例は計328件だった。
事例を発生年別に見ると、「2009年」が176件で最も多く、以下は「08年」が85件、「07年」が42件、「01-06年」が21件、「10年(1月1日から1月15日まで)」が2件、「不明」が2件だった。
都道府県別では、最も多かったのは広島の45件で、これに北海道(36件)、千葉(26件)、大阪(24件)などと続いた。一方、青森、岩手、東京、静岡、鳥取、長崎ではゼロだった。
また、事例の種別では、「除細動の適応がある(疑い含む)傷病者に対し、AEDが除細動適応なしと判断した疑いがあると報告があった事例」は119件、「除細動の適応がない(疑い含む)傷病者に対し、AEDが除細動適応ありと判断した疑いがあると報告があった事例」は38件。このほか、メモリーカードに心電図が記録されないなどの不具合の疑いがあると報告があった事例は171件だった。
事例数について総務省消防庁は、事例の中には、▽機器に不具合があるもの▽機器の性能限界として許容される範囲内にあるもの▽機器に特段の不具合があるとは言えないもの-などが含まれている可能性があるとして、「多いとも少ないとも言えない」としている。
一方、厚労省は不具合の疑いが報告されたAEDの製造販売業者に対し、必要に応じて自主回収などの措置を講じるよう指示した。また、調査結果については現在、09年度厚生労働科学研究費補助金事業である「循環器疾患等の救命率向上に資する効果的な救急蘇生法の普及啓発に関する研究」(主任研究者=丸川征四郎・医療法人医誠会医誠会病院院長補佐)で専門的な分析を実施中で、年度内をめどに取りまとめる分析結果を基に、両省庁で必要な対策を講じる予定だ。
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いくつか誤解があってはいけないので申し上げたい。
■AEDは100%電気ショックをするものなのか?
これは、当然一般市民の皆様は100%と思っていると推察します。
心室細動と呼ばれる心臓の痙攣状態に電気ショックをするための機械なので、必要な場合は100%電気ショックをするだろうと思っておられると思います。
しかし、メーカーにより解析の精度は違いますが、100%ではありません。
高い確率で解析はしておりますが、100%ではないということを知っておいていただきたい。
使用環境、条件などさまざまあります。それだけ、解析は難しいものでもあるということでもあります。
しかし私も、とある病院でAEDが動作しないということで、救命コムのAEDを急遽レンタルしたことがあります。
そこでお話をお聞きしたら、他社メーカー品でしたが明らかな心室細動だったのにAEDが電気ショックが必要ないと判断し電気ショックしなかった。と言われていました。
100%ではないにしろ、精度を高める努力を各メーカー様にお願いしたいですね。
※救命コムの過去の参考ブログ
AEDの誤解
AEDの心電図表示機能について
何のためのAED?そこから学ぶこと
■解析の項目の違いがある
解析の項目というのがあります。救命コム取扱のフィリップス社製品は、振幅・心拍数とそれ以外に2項目、あわせて4項目を解析し精度の高い解析がなされています。他社では、振幅・心拍数といった基本的な2項目程度の解析がほとんどです。解析性能の差はここにあると思われます。
車の揺れのために作動しなかったりしたとニュースにもありましたが、余分なノイズなども入るのでそれをどう判断するかは解析項目により精度の違いはあると思います。
■ペースメーカーなどの信号を検出するか
これも、救命コム取扱のフィリップス社製品は検出します。
しかし、他社製品で検出できるAEDを聞いたことはありません。ここでも誤作動の可能性はでてきます。
フィリップス社製品は、ペースメーカーの信号を検知しても、その信号が除去され解析されています。
ペースメーカーをつけている人は少ないかもしれませんが、つけられている方はAEDを必要とする可能性が高いので大事な機能ですね。
■AEDには性能差がある
AEDには、こまかいところで性能差があります。
個人の備えに向いているAED
屋外のイベントなどに向いているAED
水辺の備えに向いているAED
一般市民向けのAED
などなどさまざま
基本的な必要な時に電気ショックをするというという意味では同等品ですが、差はあります。
AEDに関しては価格だけが重視される製品でないということも知っておいていただきたいと思います。
先日も、とある役所様とお話した時に言われていました。
「機能や性能なんて知りません。価格が安ければどれでもいいです。役所ですから…」と
機能や性能も知った上で、価格を重視するなら分かりますが…
しかし、良く知っていただきたいと思います。
自分の備えなら、AEDの価格だけで選ばないはずです。
ともあれ、AEDがあれば全てが解決するというような傾向が少なからずあるため
このようなニュースが流れると、AEDは信用できないという方向に向かうのではないかと心配です
もともと、解析性能は100%ではないし、メーカーにより差もあります。
AEDは重要なツールですが、最も大事なのは助ける側の人です。
何かあれば助けようという人が増えればもっと多くの人が助かります。
AEDに対する不信感だけが強まらないよう願います。